国勢調査は、5年に一度、日本に住むすべての人と世帯を対象に行われる大規模な統計調査です。
ニュースなどで「調査員が各家庭を訪問します」と聞いたことはあっても、実際にどんな仕事をしているのかは意外と知られていません。
私は今回、2025年の国勢調査で初めて調査員をやってみました。仕事を終えてみて、国勢調査の大切さを学びつつ、現場ならではの苦労もあったなと思います。
この記事では、国勢調査の裏側を少しでも身近に感じていただけるよう、調査員としての体験を振り返りたいと思います。
国勢調査について
そもそも国勢調査って?
簡単に言うと、日本に“今どんな人が、どのくらい住んでいるか”を調べるための大きな調査で、5年に一度、全国で行われる国の大事な統計調査です。
調査を担当しているのは総務省統計局で、結果は人口や世帯構成、仕事の状況などを把握するために使われます。たとえば、学校や病院の数を決めたり、地域の福祉サービスを考えたりする時にも、このデータが欠かせません。
「そんな個人情報を調べて大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、法律でしっかり守られていて、統計以外の目的で使われることはありません。
マイナンバーでは管理できないの?
マイナンバーの情報は「個人の識別」に使われる
マイナンバー制度は、税金・年金・医療などの行政手続きを効率化するための仕組みです。
つまり「行政が個人を正確に識別する」ための番号であって、全国の人口や世帯の状況を把握するためのものではないんです。
国勢調査は“住民票に載っていない人”も対象
国勢調査では、外国人留学生や短期滞在の人、住民票を移していない単身赴任者や学生なども含めて調べます。
一方、マイナンバーの情報は住民登録をしている人しか基本的に含まれません。なので、実際に「今、日本に住んでいる全員」を正確に把握できるのは国勢調査だけなんです。
世帯の形や就業状況など、マイナンバーではわからない情報が多い
国勢調査では「世帯の構成」「仕事の種類」「通勤・通学の状況」など、住民票や戸籍ではわからない項目も調べます。
これらのデータがあることで、地域の人口動態や雇用状況をより正確に分析できるようになります。学術研究のときも、国勢調査の結果を用いることが多々あります。
例えば私は卒業論文は保育をテーマに執筆したので、専業主婦世帯と共働き世帯の数の推移などは、国勢調査の結果をもとに調べました。
通勤・通学先なんて答えたくない、という方もいますが、例えば災害が起きたときのための備蓄品について、どのくらいの量が必要か検討する際にも用いられます。
災害は、自宅にいるときに起こるとは限らないものですもんね。
調査員になるまで
申し込み
募集は調査のある年の2月くらいから行われていたようですが、私は4月頃に申し込みました。広報で調査員の募集がされていたのがきっかけです。
申し込み方法は電子申請のほかに、指定の様式に記入して郵送or窓口に直接持参でもOKでした。
自分の住所・氏名・連絡先等のほかに、希望する担当地域(自宅近くか離れたところが良いか)や、統計調査員の経験があるかどうか記入するもので、簡単に申請できます。
市役所から電話連絡・報酬の確認
6月頃に市役所から連絡があり、調査員として活動できるか確認と、おおまかな担当地区について説明がありました。
1調査区だいたい50〜60世帯で、1人の調査員につき2調査区まで担当できるとのこと。私は自宅すぐ近くのマンション一棟を担当することになりました。2調査区分、約120世帯ほどです。
実際に活動開始となるのは9月になること、事前説明会の案内は8月中に郵送すると説明がありました。
報酬は1調査区で約5万円、2調査区で約9万円とのことでした。
調査開始前の準備
事前説明会への参加
9月初旬に説明会があり、会場には同じ地域の調査員が集まっていました。性別や年齢層はさまざまですが、比較的60〜70代くらいの人が多かったように思います。
研修では、配布される調査員用のファイルと資料を使いながら、
- 調査前の事前準備
- 調査票の配り方・回収の仕方
- 不在の場合の対応方法
- 個人情報を扱う上での注意点(守秘義務)
- 調査票を提出するまでのスケジュール
- トラブルが起きた時の連絡方法
などについて学びました。
また調査員の身分は「非常勤の国家公務員」になるとのことで、用意されていた身分証に自分の顔写真を貼って準備しておくように説明されました。
加えて、調査の時に1人だと不安な人は、付添人を決めて事前に申請するように案内がありました。
ただしあくまで付添いで、調査の手伝いをしてもらうことはできません。付添人は家族だけでなく友人・知人でもOKとのことでした。
配布する調査票等の受け取り
調査員が使うバッグ、バインダー、筆記用具、防犯ブザーなどは説明会の時に持ち帰りましたが、各世帯に配布する調査票やチラシなどは、後日宅配便で自宅に送られてきました。
特に調査票はすでに封筒に入っていましたが、中身に不備がないか、配布期間前によく確認しておくように指示がありました。
調査地区の現地確認
自分の調査する地区を実際に歩いて、どこの家に人が住んでいるのか、危険な箇所がないかを把握します。
調査結果を反映した地図を見ながら調査区要図という地図を描きます。私の市では一から地図を描くわけではなく、すでに印刷された白地図に、目印になる建物名などを記入しました。
そして調査区要図の各世帯に世帯番号を割り振っていき、調査世帯一覧という様式にリストアップしていきます。どの家にどの番号を割り振るかは調査員が決めました。地図で割り振った世帯番号と、調査書類の番号が紐づく形になります。
あくまで調査員が自分の足で歩いて確かめるだけで、この家には誰が住んでいるといった事前情報は調査員には知らされません。
調査資料の配布
配布したときのこと
配布期間は決まっており、9月下旬の約10日間でした。
基本は対面で手渡しをする必要がありますが、このご時世、かつ私が担当したのはオートロックのマンションなので、ほとんど応答はありません。
不在の場合は不在票を入れながら、時間帯を変えて3回程度訪問してくださいとのことでしたが、市の方から「訪問回数や日時に厳密な決まりはない」とも言われました。
実際、私自身の家はインターホンも鳴らされずにポストに調査票が入っているだけ。これでいいんだという感じ…。
3回訪問しても、直接会えた世帯は全体の3分の1ほど。
ちなみに原則として、調査票の配布をするときに世帯主の氏名や世帯人数を確認する必要があるのですが、市の方から「無理に聞かないでください」と言われたので、私は最初から聞きませんでした。
会えた方には調査について簡単な説明と、回答方法(インターネット・郵送・調査員が後日受け取り)のみ確認し、会えなかった世帯は調査票をポストに投函しました。
配布したときの反応は?
私の場合はオートロックマンションだったので、そもそも応答がない世帯が多く、調査員である私が嫌な思いをすることはほとんどなかったです。
調査の趣旨や回答義務があることを説明しても「我が家は拒否します」という方はいましたが、そういう方には市の窓口を案内した上で、調査票の投函だけは行いました。
チラシの配布
配布期間が終了した後の3日間で、回答を促すチラシを各世帯に配布します。これは手渡しではなく、ポスト投函でOKでした。
配布後の対応
回答状況の確認と書類作成
調査の回答期限が終了した後の10月20日頃、回答状況確認票が自宅に送付されます。
この票には、インターネットで回答のあった世帯の代表者氏名や住所、世帯員数などが記載されています。(郵送で回答があった世帯については郵送で回答したということのみが記載)
この情報を調査世帯一覧に転記します。回答率は8割くらいかな…という印象でした。
説明会のとき、回答状況確認票を確認し未回答の世帯は訪問し回答を促すように言われていましたが、それはしなくていいとの案内も同封されていました。
配布時に回答方法として、調査員が後日訪問を希望した世帯で回収に至っていない世帯のみ再訪問をするよう指示がありましたが、私の担当地区で調査員の回収を希望した世帯はありませんでした。
書類の受け渡し
完成した書類と余った書類などをまとめて、指定された日の受領会に参加しました。
調査前との説明会とは違い、5人くらいずつ、時間をずらして集合時間が設定されていたようでした。その場で書類に不備がないか確認され、20分程度で終了しました。
調査に使用したカバンやバインダー、身分証は返却、支給された筆記用具と防犯ブザーは持ち帰るよう言われました。
まとめ:仕事を終えてみて
嫌だったことはあった?
事前に市の方から「とにかく身の安全を第一に」と念を押されていたので、そんなに怖い思いをするのかとドキドキしていましたが、私自身は特に嫌なことや、特別大変なことはありませんでした。
ただ、これは私の担当した地区が比較的若い世代向けのファミリータイプマンション、かつオートロックということだったというのも大きかったと思います。
高齢の方のみの世帯だと、回答方法をかなり丁寧に説明する必要があったり、対面だと怒鳴られるなんてこともあるそうです。
また、私は現在仕事をしていないので時間の融通がききますが、仕事をしながら調査員をやる方にとっては、複数回訪問しないといけないというのは大変だろうなと思います。
夜遅くに訪問して不審がられたり、暗い夜道で交通事故に遭いかけた人もいるとか。
あと、書類が基本手書きなので、その点を負担に感じる人もいるかもしれません。
私の担当はマンションなので事前調査も簡単(というか、オートロックなので中に入れず、住んでいるかどうか確認しようがない)ですし、地図も描く必要がなかったので、その点も助かりました。
また調査員をやりたい?
前回の国勢調査のときは実家に住んでいてそもそも回答したという記憶もなかった私ですが、今回調査員の仕事をしたことで、その重要性を知ることができました。そういう意味では、とてもいい経験になったと思います。
次の調査は2030年。そのときに自分がどんな状況かはわかりませんが、調査員をできる状況であればまたやってみたいなと思います。
調査員ができないとしても、国民の義務として国勢調査にきちんと協力したいです
\他にはこんな仕事もしてみました/




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